【本当の親離れ】子は親を救うために「心の病」になる(高橋和巳 著)【子離れ】

読書

こんにちは、つなです。

先日、本を読みたくて本屋に行ったんですが、その時に偶然見つけて衝動買いしてしまった本の感想を書いていきたいと思います。

その本というのが、『子は親を救うために「心の病」になる』(高橋和巳 著)です。

今回は、この本を読んで思ったことを書いていきます。

この記事を読むにあたって、私の心境に目を通してもらえると助かります。(2020年8月現在)

それでは始めていきましょう。

本の概要

本書は、全部で5章で構成されています。「心の病」のケースを1〜4章にわたって紹介していて、1章と2章は一般的なケース、3章と4章は稀なケースを紹介しています。

 1章では、親に従い続け心の病になってしまった息子のケース。ここでは、息子の家庭内暴力だったり、不登校・ひきこもりについて触れています。
 2章では、摂食障害になってしまった娘と、我慢の人生を歩んできた母親のケース。
 3章では、虐待を受けて育った母親が、娘に暴力をふるってしまうケース。
 4章では、親との繋がりを持てず、孤立感を抱いてしまったケース。

 5章では、4段階の心の成長過程に加え、5つ目の心の発達段階「宇宙期」を紹介しています。

心の発達段階について

まず、この本の著者は精神科医であり、その中で著者は、不登校、ひきこもり、摂食障害や「うつ」などをきっかけに来院された患者さんの中に、ある共通の法則のようなものを見出しています。

それは、タイトルでもあるように、子は親を救うために「心の病」になるということです。

この本を説明するにあたって、子どもの4段階の心の成長の過程を理解しておく必要があります。

  • 1.乳幼児期:心身ともに親と一体の時期(0〜3,4歳)
  • 2.学童期 :親と一緒に生きる時期(4,5〜12歳)
  • 3.思春期 :親から精神的に自立していく時期(12〜20歳頃)
  • 4.成人期 :適応が完成し、社会の中で生きる時期(20歳頃〜)

子は2,3歳になると第一反抗期が始まります。ここで初めて子どもは行動の自由を獲得します。自由を獲得した子どもは、思春期までの約10年間、貪欲に親の生き方を学び、価値観を取り入れ、社会を理解する「学童期」になります。

そして、問題はこの学童期に起こります。

子どもは、12歳頃まで無心に親を真似て成長します。すべては親が基準で、親を信じて疑わない。それはやがて大人になっていくときの大切な心の基盤になります。

しかし、親も完璧な人間ではないから、気持ちの偏りや悪い心、嘘、辛い気持ち、間違った生き方を抱えています。子どもはこういった親の「心の矛盾」でさえも、丸ごとコピーしてしまうわけです。

こうして抱えた心の矛盾は、思春期になって爆発します。思春期は、親から精神的に自立していく大事な時期です。そして、反抗期の激しさは、親が教えた心の矛盾に比例します。

親の生き方に修正を迫る思春期の「心の病」

苦しい生き方を強いられた子は、思春期になって苦しみを訴え、生き方を変えたいと親に助けを求めようとします。しかし、親は長い間続けてきた自分の生き方に疑問を持っていないので、子どもが何を訴えているのか見当がつかないのです。子どもが「苦しみ」を訴えても、親は自分の人生観から「あなたには我慢が足りない」としか応えられないのです。

また親から見ると、子どもはただ「我がままを言い」自立していないように映ります。親は、「そんな子に育てた覚えはない」とイライラし、子どもは「親がいけない」と親子対立は激しくなります。

子どもはわかってもらえないと落胆し、挫折し、この怒りをどこに持っていけばいいかわからなくなり、最後の手段として「心の病」になります。

第5章の「宇宙期」について

この本で、最も重要なキーワードとなる「宇宙期」がどんなものかを簡単に説明します。詳しいことは、自分で本を手に取って見てみてください。

本の始めに著者は、宇宙期を想定するにあたり、2つの理由があると述べています。
 1つは、成人期の後に、大人になるプロセスを削ぎ落としてきたものが復活し、成人期とは違う心が生まれる現象があることです。このときに人は、哲学的な自問をするそうです。
 2つ目は、「親を持てなかった」子どもたちの心の現象です。彼らは心の発達の最も重要な時期に「普通の」親子関係を持てなかった結果として、「この世界」を「普通の」人とは全く違う視点から理解しており、クリニックを訪れる彼らには4つの心理発達段階が通用しないことがわかったと記しています。

以上のことから既知である「この世界」とは違う心の持ち方を「宇宙」とすることで、宇宙期を想定する必要があったそうです。

これは個人的に思ったことですが、宇宙期とは言わば、善悪の判断をやめて、何事も受け入れる感覚なんだろうと思いました。気付きの世界と言えばいいのでしょうか、宇宙期の説明で紹介されていたエピソードがまさにそんな感じでした。

もう少し深掘りしていきます。

宇宙期を理解するための3つのヒントを挙げておきます。

「アウトサイダー」「中年クライシス」「善悪の価値の相対化」というものです。

アウトサイダーは、社会の既成の仕組みから外れて、独自の思想を持って行動する自由人のことです。著者は、ムーミンに出てくるスナフキンをアウトサイダーのイメージとして紹介されていて、更に、スナフキンは何かの大きな挫折を経験したという興味深い推測もしていました。

中年クライシスは、人生の後半の心の危機である。ごく「普通の」社会的な価値観にしたがって生きてきた大人が、人生の後半で、目の前に近づきつつある「死」を見つめながら、自分の人生は何だったのかを振り返り、信じてきた価値観を見直そうとすることです。

善悪の価値の相対化は、頑張ること=善、頑張らないこと=悪と固定するのではなく、頑張ってもいいし、頑張らなくてもいいと思えることである。生死で言えば、「死」を避けながら「生」きるのではなくて、この対立から「離れる」こと。生を否定しない死の受容であると言っています。

宇宙期は、「普通の」人にとってはオプションの問題で、進んでも、進まなくてもいい次元だそうです。「普通の」心理システムの中で幸せに人生を閉じてもいいし、どうしても虚空を知りたくて進んでいくこともあるみたいです。

一方、最初から不完全な心理システムをもち、生きることがつらかった人たちは、宇宙期へと進む可能性は高いと言っています。不完全な心理システムだった故に、社会的な存在感に執着することがなく、ずっと深く、長く苦しんできたからこそ、人間存在の核、その最後の幸せへと向かう力が強いのだそうです。

感想

この本を読んでみて、子は親の影響をストレートに受けてしまうということが学べました。

親の教育は、子に呪いのように纏わりついて、成人してからも苦しめ続けてしまうケースがあるんだと知った時、この連鎖はどこかで止めなければならないと思いました。

そして、改めて反抗期の重要さについても再確認することができました。これは、教育論に通ずるものであると思いますし、もし将来子どもができたら、健全に反抗ができる環境を作らなければいけないなと思います。

そのためには、厳しいしつけは絶対に避けなければなりません。しつけをするにしても、悟らせるような感じで、どんなに忙しくても子どもにちゃんと向き合うべきだと感じました。

自分は今、何期なのか

思えば、この本に書いてあるような思春期はなかったかと思います。反抗期なんて全くなかったと自分でも自覚していますし、ただ歳だけを重ねて、成人期になっていてもいいような歳なのに、ずっと生きづらさを感じていることも確かです。

つまり、不完全な心理プロセスを歩んでいたと言ってもいいでしょう。

しかし、宇宙期にはたどりついていない気もします。本書の中で、著者はこう述べていました。

『生きて「いる」から、ただの「ある」に変わるところ。その場所が宇宙期である』と

まだ、自分は「ある」という感覚がわかっていません。加えて、親との関係性も変わっていませんし、絶賛「心の病」発症中なので、そういう意味では、長く苦しい反抗期の最中かもしれません。

最後に

この本は、引きこもってしまったダメな自分を少し肯定できる、いい本だったと思います。

内容も重い内容かと思いきや、1日(早い人なら半日くらい)で読めるくらい読みやすかったです。

それぞれの章のケースで、実際のカウンセリングの会話もいれており、意外と幅広い読者へ考慮した構成となっていました。

初めての書評ということで、出来の悪い読書感想文のような感じに仕上がってしまいましたが、今回も、ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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